東京ハードナイト 16

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真琴は、藤堂を愛しているのだ。

 

それも中途半端な愛情じゃなくて、一緒に死んでもいいと思える位、激しく強く藤堂を愛している。

 

だからこんなにも淫らに大胆になれるのだ。

 

由一はそのことに気づいた時には、もうその場に立っていられないくらい感じてしまった。

 

足がガクガクとして、今にも崩れてしまいそうである。

 

しかも、下半身がトクントクンッと激しく脈を打っていて、少しでも触ったらこのまま果ててしまいそうだった。

 

「あぁぁぁ・・・・・」

 

ひときわ大きな声で、真琴は喘いだ。

 

真琴の股間を弄っていた藤堂の指が、蕾に挿入されたためであった。

 

だがよく見ると、藤堂の指は挿入しただけではなく、中で何かを探しているようだった。

 

「あっ・・・藤堂さんっ・・・」

 

「まだ入れていたのか?いい子だな・・・真琴」

 

「藤堂さんの命令だから・・・」

 

「我慢できた御褒美は・・・何がいい?」

 

二人の会話は、下手なエッチビデオを見るよりも、由一の下半身にズンッときていた。

 

それに藤堂がゆっくりと真琴の蕾から取り出したものを見て、由一はますます目を丸くした。

 

真琴の中には、真珠のネックレスが入っていたのだ。

 

真珠の玉を一つ掴みそれを引き出すと、ズルズルと蕾から真珠のネックレスが出てくる。

 

「あっ・・・あっ・・・ああーん・・・・・」

 

一粒ずつ出していくと、真琴は今までとは違った音色の声で喘ぎ出す。

 

その声は、由一の身体を震わせ、そして思わずイッてしまいそうなくらい色っぽかった。

 

真珠を取り出すと、藤堂はスラックスのファスナーを下げ、真琴に膝の上にのるように命令する。すっかり感じまくっている真琴は、肩で大きく息をしながらゆっくりと藤堂の股間を開き跨ぎ、そして腰を落としていく。

 

「あっ・・・ああっーーーーーーっ」

 

藤堂の分身は、まるで大蛇のようだと由一は思った。

 

頭の部分が張った大蛇が、鎌首を擡げて真琴の白いお尻の中に入っていく。

 

そんな光景を目の当たりにした由一は、ついにこらえ切れなくなって下着をつけたままイッてしまった。

 

そしてイッた瞬間は、なぜか顔の右側にひどい傷がある堂本を思い出す。

 

堂本の愛撫も、とても巧みでうまかった。

 

キスだって蕩けるように甘くて、頭の中が真っ白になるくらいステキで、あのまま今の真琴のように淫らなことをされてもいいと思ったぐらいなのだ。

 

ああっ。

 

堂本さんに会いたいっ。

 

堂本さんにキスされたい。

 

由一は、床にペタッと腰を下ろし、濡れてしまった下着の感触を感じながら、心の中でそう思っていた。

 

一瞬正気に返り、どうして堂本のような男のことなんかっ・・・と思ってみたが、身体の欲望には勝てなかった。

 

下半身がどんどん淫らに疼いてしまう。

 

それに、考えれば考えるほど、どういうわけか堂本を憎めないのだ。

 

借金の形で監禁されたが、ひどい扱いを受けているわけではなかった。

 

普通ヤクザといえばもっと荒らしく暴力的で、気に入らないことがあればいつも愛人とかをぶん殴っているようなイメージしかなかったのだが、堂本は違っていた。

 

暴力をふるわれたことは一度もない。

 

引っ掻いて傷つけてしまった時だって、殴ったりされなかった。

 

高層マンションにたった一人で監禁されてはいたが、住んでいたマンションや食べ物、そして衣服に至っても、何もかも普段は望んでも手に入らないようなものばかり与えてくれたのだ。

 

野球の開幕戦を見に連れていってくれたのだって、絶対逃げないと約束したから連れていってくれたのだ。

 

もしかしたら、堂本は堂本なりに、最大限の愛情を示してくれていたのではないだろうか?

 

愛しているという言葉は一度も聞いていないし、出会ってまだ間もないが、もしかしたら堂本は真剣に由一を愛してくれているのではないだろうか?

 

由一は、床に座ったままいろいろなことを考えていた。

 

目の前では、背中を向けた真琴が大胆な格好で藤堂の膝に跨がり、激しく上下に動いている。

 

ぬるぬると光を放ちながら、真琴の中に入っていく大蛇を見つめて由一は思った。

 

なんて淫靡で美しい光景なんだろうかと。

 

藤堂と真琴の激しいセックスシーンをこうして見ていても、まったく嫌な気がしないことを不思議に思いながら、由一は心のどこかで真琴に憧れていた。

 

あんなふうに、自分も誰かに激しく愛されたいと。

 

堂本に、激しく愛されてみたいと。

 

男同士なんて、破廉恥とかいやらしいとか最初はそう思って毛嫌いしていたけど、そうじゃない愛する者と愛される者。

 

その二人が激しく愛情を確かめ合っている。

 

ただ、それだけなのだ。

 

普通の男女と何も変わらない。

 

いや、もっと深くて強いのだ、藤堂と真琴の結びつきは。

 

「あっ・・・あぁっ・・・藤堂さんっ・・・」

 

真琴が切なげな表情を見せて、藤堂の名を呼ぶ。

 

真琴の蕾の中には藤堂の大蛇が根元まで入り込んでいて、真琴をもっともっと淫らで妖艶な情夫に変えていく。

 

由一は、高価なペルシャ絨毯が敷き詰められた床に座っていたが、何かに堪え切れなくなったように、特別室のドアまでよろよろとよろめきながら歩いていった。

 

そして静かにドアを開け、外に出て行く。

 

「あぁぁぁーーーーーーっイッちゃう!」

 

藤堂が下から突き上げるように腰を揺らすと、真琴の喘ぎ声に、いっそう艶やかさが増していく。

 

由一はその声にドキンッと胸を高鳴らせながら、ドアを閉めた。

 

驚いたことにドアを閉めてしまうと、廊下にはまったく真琴の喘ぎ声は聞こえてこなかった。

 

防音効果のある設計になっているのだろうが、由一はちょっとだけそのことが残念だった。

 

だが、正気に戻って自分の下着の中がひどいことになっていると気づき、慌てて周りを見渡す。

 

さっき真琴が犯されているのを見ながら、勝手にイッてしまったのだった。

 

「・・・・・着替えなきゃ・・・」

 

由一は呟くようにそう言うと、困惑したように下半身に視線を落とした。

 

真琴の声を聞いただけで、まるで自分が愛撫されているような錯覚に捕らわれてしまうなんて。

 

しかも自分が想像した相手が、あの堂本だなんて・・・・・。

 

由一は、ロッカールームに入ってからも、しばらく呆然として立ち尽くしたままだった。

 

「どうしたの?」

 

そんな由一に、このアクアのナンバー2『聖一』が声をかける。

 

「特別室で、何かあった?」

 

心配そうに聖一が尋ねると、由一ははっとして現実に意識を戻した。

 

今また、堂本にキスをされ、押し倒されて愛撫されたことを思い出していたのだ。

 

「あっ・・・いえっ。なんでもありません」

 

と、由一が真っ赤な顔で慌てふためきながら言うと、聖一は整った甘いマスクでふふっと笑った。

 

「君はラッキーだよ、由一。あの特別室に真琴様と一緒に入れたんだから。しかも藤堂四代目に顔まで見知ってもらって・・・。由一はいったい何者なんだ?」

 

「いえ、私は別に・・・」

 

「隠さなくてもいいよ。きっとどこかの力のある人の情夫なんだろうけど、でもラッキーだよな。真琴様に目を掛けてもらえるんだから・・・」

 

真琴は、どうやらこの店のホストたちから羨望の眼差しで見られているようだった。

 

日本最大の暴力団組織、藤堂組四代目、藤堂弘也の情夫。

 

その事実が真琴の評価をいっそう上げたのは事実だったが、真琴の人気の秘密はやはりあの天使のような美しさと心の温かさだった。

 

アクアのホストたちは、そんな真琴に心底惚れているのだ。

 

「まぁ、頑張れよ。ここには他人の人気を羨んだり邪魔をしたりする了見の狭い、つまりレベルが低いってことだけど、そういうホストはいないから安心して」

 

「あ・・・はい」

 

紺地に白いストライプ柄のスーツを着ている聖一は、それだけ言うと、ロッカールームから出て行く。

 

由一はやっと一人になると、周りを見渡してからスラックスを脱ぎ始めた。

 

飛沫が付着している下着なんて、早く脱いでしまいたい。

 

由一は急いで着替えると、もう一度ネクタイを締め直した。

 

鏡の中の由一は、まだ赤い顔をしている。

 

「・・・どうして堂本さんのことなんか思い出しちゃうんだろう・・・。あの人は怖くて・・・無理やり私を攫った人で、大切にしてくれるのは最初だけで、飽きたらきっとどっかに売っちゃうような、非道なヤクザなんだから。藤堂さんのようなヤクザとは違うんだから・・・」

 

由一は独り言のようにそう呟いて、自分の心を否定しようとしたが、また堂本にキスされた時のことを思い出してしまう。

 

そのたびに由一の頬は熱くなり、胸はドキンッと激しく高鳴ったが、それがどうしてなのか由一には分からなかった。

 

「・・・・・でも・・・キスはうまかったかも・・・。とってもステキだった・・・・・」

 

由一はそう呟きながら、指先で唇をなぞってみた。

 

「堂本さん・・・」

 

由一の頭の中には、藤堂と真琴の濃厚なセックスシーンではなく、顔の右側に傷がある堂本の顔だけが浮かんでいた。