ごあいさつ

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     ごあいさつ

いいやま学びの里コミュニティカレッジ代表

  千坂 経悦(陶芸家)

 

 

 

 

 

2006年にはじまった「学びの里サマーカレッジ」が12年目にして、「いいやま学びの里コミュニティカレッジ」によるイベントへと生まれ変わりました。振り返ると、あっという間でしたが、10年という歳月の刻みにはそれなりの重みがあり、これまでの経験を活かしながら、多くのみなさんと、飯山そして奥信濃におけるコミュニティカレッジの可能性を模索していきたいと考えています。

コミュニティカレッジは、この地域の持続可能な未来に向けて行動するみなさん、さらに域外から風を送っていただけるみなさんが交流し、共に何かを生み出す創発のプラットフォームをめざしていきます。また地域の高校生・女性・若者など、将来の地域づくりの担い手として期待されるみなさんの人づくりにも貢献していきたいと思います。

さらに、様々な大学の学生のみなさんがこの地域での学びのために集い、やがて国内外からこの地域を訪れスタディ・ツーリズムに参加する人の流れもめざします。

コミュニティカレッジは、奥信濃の伝統文化を活かしながら、一人一人の豊かな人生と未来に希望を持てる社会にとって大切な「学び」を手がかりとして、内側にも外側にも開かれた地域をつくり、文化力や地域力を育みながら、地域の課題解決に取り組みます。そしてこのような実践を通して、将来にわたって人々が住み続けることができる経済力を含めた地域の持続可能性を高めるための学びのプロジェクトを提唱し、先導していきたいと思います。

私自身、若い頃に横浜から移住し、この地域で陶芸家として、高校教師として半生を歩んできましたので、アートをはじめとする文化や教育の可能性を確信しています。

大学のないまちで、自由を大切にしながら、活き活きとした学びの空間を様々な人たちと生み出していくこと、それが「いいやま学びの里コミュティカレッジ」のミッションです。

多くのみなさんが、私たちが提唱する学びのプロジェクトに参加していただけることを心から願っています。

 

 

 

2015顔写真

 

          ごあいさつ

  いいやま学びの里コミュニティカレッジ学長

  法政大学人間環境学部教授

        小島 聡

 

 

 

 

交流人口が創る地域学の始まり

2003年に飯山と出会い、「持続可能な地域社会」という視点でゼミナールの学生と調査研究に取り組みながら大学の地域貢献の一環として、「地域学」の場をつくろうと考えたのが、「学びの里サマーカレッジ」の始まりです。「地域学」は住民が地域の歴史・文化・自然などの価値を再発見しながら、現在の課題や将来の可能性について考え、地域づくりの実践につなげていくのが主流です。それに対して、「定住人口」である地域住民と「訪問者人口」である都会の若者達が「交流人口」になって大学のない飯山で「地域学」の場を創り、「持続可能な飯山」への学びの実践を展開するという発想は、地域づくりの引き金になる「よそ者・若者・ばか者」という言葉を体現した挑戦でした。

こうして、交流人口(住民+若い訪問者)が創る地域学」の場をめざして2006年に始まった「学びの里サマーカレッジ」(通称・サマカレ)は、きわめてささやかではありますが、近年よく使われる「域学連携」(地域と大学の連携)の先駆け的な取り組みであったと思います。また、シンクロニシティ(共時性)という言葉がありますが、都市型のソーシャル系大学として市民主導で実施され同様の取り組みが各地に広がりつつある「シブヤ大学」も2006年にスタートしました。自治体が生涯学習政策の一環として実施する市民大学や、市民主導の地域大学のケースはそれまでにもありますが、世紀転換期という時代状況にあって、各地の共時的な「地域学」の模索の1つがサマカレだったのかもしれません。

 

【第2ステージのミッション】

2009年の第4回からは、当初の理念どおり、飯山の高校生を含む地域のみなさんと東京の大学生が「交流人口」になって協働して実施する実行委員会方式へと移行し、様々な社会実験も行いました。飯山市本町商店街の「まちカフェ空楽」もそうした社会実験の所産ともいえます。また2013年の第8回からは、地域の空間をまるごと博物館に見立てるエコミュージアムをヒントにして、「美村」(Bison)というコンセプトで、飯山市大川区の住民のみなさんとの協働も始まりました。

そして2015年の10周年を1つの区切りとして、飯山、そして北信地域・奥信濃全体を視野に入れた「持続可能な地域社会」づくりに向けて、これまで関わってきた人々が対話し、サマカレを第2ステージへと進めることになりました。2014年に「消滅可能性都市」という言葉が日本中を駆け巡りましたが、「消滅可能性」とは「非持続可能性」(地域が持続可能ではない)を意味するといえるでしょう。そうした負の可能性について、安易に悲観論や楽観論に陥ることなく、持続可能な地域の未来をめざして希望の種を蒔き育てていくこと、域内外の様々な人々が参加し、自由な交流によって、実践的な地域学を創っていく本格的なプラットフォーム型のコミュニティカレッジへと発展させていくための挑戦が第2ステージのミッションです。これは、大学空白地域において、持続可能な地域社会の姿を模索していくためには、地域独自のプラットフォーム機能をもつ「知の拠点」を形成していくことが大切であるという問題意識に基づいています。

 

【地域づくりのプラットフォーム】

第2ステージは、こうしたミッションをふまえて、いくつかの具体的な役割・機能を果たしていきたいと思います。

 

①飯山や奥信濃全体を舞台とする地域づくりに関する多様な取り組みが集いながら、さらに新しい取り組みが生まれるイノベーションを促す役割

②持続可能な地域の未来について対話が繰り広げられるプラットフォームとしての役割

③域内を中心としながらも域外にも開かれた地域づくりにかかわる緩やかネットワークの形成を促す役割

④コミュニティカレッジとして地域を担う人づくりの場としての役割

⑤域外への発信と交流人口の拡大を促す役割

⑥他地域の取り組みとの連携

 

【新たな仕組み(運営組織とエントリー方式)】

2015年の第10回までは、9月の上旬の週末2日程度、実行委員会形式で運営してきました。しかし、2016年からは、地名もついていなかった単年度ごとの「学びの里サマーカレッジ」を、日本中や世界への発信も視野に入れて「いいやま学びの里サマーカレッジ」と名称を変更した運営組織が、毎年のイベントを実施するという方式にリニューアルしました。そこで、これまでの継続性を考えれば、2016年は第11回になりますが、イベントとしての新生サマカレは、「いいやま学びの里サマーカレッジ2016」として再スタートしたので、当面は主に飯山を舞台として、8月上旬から9月の中旬まで、将来の持続可能な飯山・奥信濃につながる地域づくりに関する様々なプロジェクトをエントリーする方式になりました。

プロジェクトへの参加者は地域のみなさんで完結してもかまいませんし、交流人口の拡大も想定していますので、たとえば、この地域の豊かな自然や文化を手がかりとしたスタディツアーなどもあるでしょう。プロジェクトのエントリー方式を通して、多くのみなさんが気軽に地域づくりに参加できる機会をこれからも提供したいと考えています。

 

【共感の輪を広げながらコミュニティカレッジを育てましょう

そして、2016年の経験をふまえて、2017年、団体名を「いいやま学びの里コミュニティカレッジ」へとさらに変更しました。こうして、2017年からは、これまでのサマーカレッジに加えて、この地域の四季の移り変わりの素晴らしさを活かした春のスプリングカレッジや秋のウォータムカレッジ、冬のウインターカレッジの開催、常設のコミュニティカレッジなど、将来のさらなる発展を展望しながら進めていくことになりました。

地域の未来への希望を育む学びのプラットフォームに共感していただける飯山そして奥信濃のみなさんの参加を願っています。また、域外のみなさんも、エントリーされたプロジェクトを通して交流し、人生の物語に大切な出会いと経験の1ページを加えながら、一緒に地域を越えた共感の輪を広げていただきたいと思います。