自閉症をホルモン点鼻薬投与で改善
自閉症スペクトラム障害を治療できる可能性
ラポール倶楽部ココロukiukiメンタルケアココロトピックスNo.60より
■相手の気持ちを表情から汲み取れない
仕事は優秀な人なのに、ちっとも他人の気持ちが分からない・・・。
自閉症やアスペルガー症候群などの
「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれる発達障害は、
多くが高い知能やすぐれた言語理解能力を持っているにもかかわらず、
相手の表情や声色から気持ちを直感的に汲み取ることが苦手です。
このため、対人コミュニケーションに障害を呈して、
社会生活に困難をきたしてしまいます。
しかし、100人に1人以上といわれるこの障害のたしかな原因は
いまだに解明されておらず、有効な治療法も確立されていません。
今回こうした自閉症スペクトラム障害の男性患者に
ホルモン点鼻薬を投与することで、
一時的にコミュニケーション障害が改善したとする報告を、
東京大学の研究チームが昨年12月の米医師会雑誌に発表しました。
■臨床試験ではじめて効果を証明
研究チームは、
知能指数が比較的高い20~40代の自閉症スペクトラム障害の男性40名を対象に、
ホルモンの1種である「オキシトシン」を
鼻からスプレーによって1回投与する臨床試験を実施。
その結果、コミュニケーションに関する心理検査で、
低下していた対人コミュニケーションにかかわる脳の前頭前野の活動が活性化され、
相手の表情や声色から気持ちを推し量る行動が増え、
コミュニケーション障害が改善されることが初めて明らかになりました。
現在コミュニケーション障害の有効な治療法はないため、
今回の研究結果が今後の治療法開発につながることが期待されます。
オキシトシンの投与によって脳の活動を活性化して
自閉症スペクトラム障害を治療できる可能性が示唆されたことで、
同障害のコミュニケーション障害の治療法開発に光が差したのです。
オキシトシンが脳に作用する仕組みはいまのところ不明ですが、
すでに陣痛促進剤などが実用化されており、
研究チームでは、今回対象としなかった女性や幼児についても
自閉症スペクトラム障害へのオキシトシンの有効性や安全性を検証したいとしています。