果たして「便乗値上げ禁止」は正しいのか?
中小事業者を苦境に追いやるかもしれない
「便乗値上げ禁止」
消費税8%になりましたが、
さらに、来年には10%になるかもしれません。
そんなそんな中、政府では
「消費税の円滑かつ適正な転嫁のために」
というパンフレットを作って理解を求めています。
(内閣官房、内閣府、公正取引委員会、消費者庁、財務省)
http://www.mof.go.jp/comprehensive_reform/tenka_pamphlet.pdf
このパンフレットの中で私たちが注目すべき点は
①消費税の転嫁拒否等の行為の是正
②便乗値上げ禁止
でしょう。
①は消費税還元セール禁止のような価格転嫁拒否行為を、
政府一丸となって監視・取り締まる。
と言っています。かなり厳しい表現ですね。
②はどうでしょうか?
消費者の立場から見れば便乗値上げはとんでもない!
ということになりますが、
事業者、特に中小零細事業者の立場からみると、
これはエライことになったと感じる人も多いでしょう。
なぜなら、消費税が3%アップされることは、
品物の総価格が3%上がるだけではすまないからです。
たとえば、次のような場合です。
■設備的コストの発生
増税対策のために事業者が設備改修した場合は、別個に費用負担が発生します。
ポスシステムや自動販売機の設定を変更する費用を国は負担してはくれません。
値札を全て作りかえる費用も自前です。
さらに、事業によっては大幅なシステム修正を迫られる場合もあります。
■事務的コストの発生
会計年度が国の会計年度をまたぐと事務コストが発生します。
会社と国の会計年度が同じならばまだいいのですが、
会社の会計年度は、設立時に決めたものです。
事業者にとっては、事務コストの増大はどこにも転嫁できないことになります。
とくに、今回のように消費税導入決定がぎりぎりまで遅れると
事業者は直前まで対応することができず、
臨時の会計担当者を用意しなければならない場合も発生します。
■実質的な原価率の上昇
仕入れには消費税を支払います。
お客さんが消費税を払ってくれるのは、ものが売れたときです。
従って、運転資金あたり仕入れられる商品が減少します。
これは、実質的に原価率が上昇するのと同じことになります。
さて、「便乗値上げ禁止」ということで、
これらのコストアップの転嫁が全くできないことになると
利益の大幅圧縮に陥るだけでなく、
経営上の危機に繋がることにもなるでしょう。
「さあ困った!」
と嘆いたり慌てたりする前に、もう一度
「消費税の円滑かつ適正な転嫁のために」
を見てみましょう。
「便乗値上げ禁止」の項目の中に、
『ある特定の商品やサービスにつき、他に特段の理由がないにもかかわらず、
本体価格の3%を超える値上げが行われた場合、
その商品やサービスだけを見ると、便乗値上げであるように思われますが、
その事業者が、事業全体として税率変更に見合った適正な転嫁をしていれば、
便乗値上げには当たりません。』
とあります。
「事業全体として税率変更に見合った適正な転嫁」
この部分をどのように解釈するか。ということになります。
慌てる前に、税理士さんや商工会議所などの専門家に相談してみましょう。
税率変更のためにかかったコストが転嫁できるかもしれません。
消費者の立場からみて「便乗値上げ」と思ってしまう価格設定の裏には
実は、深い事情があるのかもしれないことも、知っておく必要があります。
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