東京スペシャルナイト 上 3

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するとマッサージ師は足のほうに回ると、そのまま丸い椅子に腰を下ろした。

 

「では、始めます。全身の力を抜いてください。痛い箇所があったら遠慮なく言ってください」

 

手にホットタオルを持つと、優しい口調で言う。

 

そしてまだ緊張している宇宙の足を、ホットタオルで拭いていった。

 

足、臭くなかったかな?

 

宇宙は足を丁寧に拭かれながら、そんな心配をしてしまう。

 

こんなステキで格好いい人にマッサージをしてもらうことになるんだったら、お風呂に入ってくればよかった。

 

靴下、履き替えたっけ?

 

足の爪、切ったのいつだっけ?

 

そんなことを考えているうちに、宇宙の足はホットタオルで綺麗にされていった。

 

温かいタオルでようやくリラックスした宇宙の身体から、ほっと力が抜けていく。

 

マッサージ師は、手にたっぷりとマッサージオイルを塗り込めると、宇宙の足の裏へマッサージを始めた。

 

・・・・・えっ?  き、気持ちいい。

 

足の裏のマッサージなんてって、ちょっと馬鹿にしてたけど、嘘みたいに、気持ちいい。

 

それが宇宙の一番最初の素直な感想だった。

 

そして次に、ちょっと痛くてすっごく気持ちいいっ、と思う。

 

宇宙は思わず、キュッと目を瞑る。

 

「・・・・・・・んっ」

 

マッサージ師が、足の裏のツボを圧しながら指を少しずつずらしていく。

 

痛くて思わず悲鳴が出そうになる箇所があるかと思えば、あまりの気持ちよさに頭の中がクラクラとしてしまう箇所もあった。

 

指の動きと圧しの強さの強弱で、苦痛と快感を自在に調節できる、といった感じだった。

 

「あっ・・・そこっ・・・痛・・・気持ちいい・・・」

 

つい、そんな言葉まで出てしまう。

 

男前のステキなマッサージ師は、ベッド上で一人で身悶えている宇宙を見て、クスッと優しく笑った。

 

「痛いですか?」

 

「い、いえ・・・。痛くない・・・あっ・・・ちょっと痛い・・・。でも・・・気持ちいい・・・」

 

「どちらですか?」

 

また、マッサージ師がクスッと柔らかく笑う。

 

マッサージ師が自分の反応を見て笑っていることに気づき、宇宙は頭を擡げるようにするとその顔を見る。

 

そして、目があってしまったとたんに顔を真っ赤にしてしまう。

 

「気持ちいい箇所があったらそこで指を止めますので、言ってください」

 

魅惑的な黒い瞳を細めて、マッサージ師が言う。

 

宇宙はその瞳から視線を逸すことができなかった。

 

この体制はとても苦しいのだけれど、見れば見るほど、本当に格好いいのだ。

 

襟足は少し短めで、それが長めの前髪とマッチしていてとても品があった。

 

襟元の大きく開いた白いシャツ姿は、何とも言えない男の色香を漂わせていた。

 

「ここ、痛くないですか?」

 

そんなマッサージ師をさらにじっと見つめていると、ニコッと優しく笑って聞いてくる。

 

宇宙は、慌てて視線を天井に移した。

 

「い、いえ・・・。あっ・・・気持ちいい・・・です」

 

「ではここと・・・ここを、時間をかけて揉みほぐしていきましょう。痛いところよりも気持ちいいところのほうが喜ばれそうですから」

 

「はい・・・」

 

宇宙の顔は、まだ火照っていて赤かった。

 

相手は男性だぞ。

 

しかもマッサージされているだけじゃないか。

 

宇宙は平常心を取り戻そうと心がけながら、一生懸命自分自身に言い聞かせる。

 

だがどんなに言い聞かせても、心臓がドキドキしてしまって、どうしようもなかった。

 

顔の火照りもまだ収まらない。

 

宇宙は、気持ちのいい箇所にオイルマッサージをされながら、チラッと足元のマッサージ師を窺った。

 

すると、またマッサージ師と目が合ってしまう。

 

「うひゃっ・・・」

 

宇宙は、今にも湯気が出そうな顔を慌てて反らした。

 

クスッと、マッサージ師の笑い声が聞こえる。

 

「・・・・・失礼ですが、お客様はとても素直な人ですね。感情がすぐに顔に出て、嘘がつけないというか、可愛らしいというか・・・」

 

などと言われてしまい、宇宙はますます顔を赤くしてしまう。

 

心臓なんて、もうドキドキしっぱなしだった。

 

このままでは、心臓発作でも起こしてしまいそうである。

 

見惚れるほど格好いい男性に、足の裏をマッサージされながら『可愛らしい』なんて言われてしまって。

 

どうしたらいいのかわからない宇宙は、思わず悩みの種でもある小学校のことを話してしまっていた。

 

「子供たちにはいつも『先生って可愛いね』とか『今度デートしよう』ってからかわれています。とくにすごいガキ大将が一人いて、その子に毎日からかわれています。それはもう・・・毎日が戦争のようです。あはは・・・」

 

「子どもたち?  ガキ大将?  ということは、職業は教師ですか?」

 

ちょうど足の裏のマッサージが終わったところだった。

 

マッサージ師は、最後にまたホットタオルで足のオイルを綺麗に拭き取りながら宇宙に聞いた。

 

「今度はうつ伏せになってください。身体中の力を抜いて・・・。特別にマッサージしてほしいところはありますか?」

 

宇宙がベッドに丸く開いている穴に顔を入れると、マッサージ師はうつ伏せになった背中を摩りながら優しく聞いた。