東京えっちナイト 【最終回】

すべてが終わって帰るところなのだろう。

 

少し待っていると、裏の出口から出た宇宙と遼一が、表通りに出てきた。

 

遼一は少し足取りがフラフラしている宇宙の腰を支えるようにして歩いている。

 

二人の顔には、幸せが滲み出ていた。

 

愛される喜びを噛みしめている宇宙と、愛する者と一緒にいられる喜びに浸っている遼一。

 

桜庭は、しばらくそんな二人の後ろ姿を眺めていた。

 

 

一度は断り、父親の跡はつがないと断言した遼一だが、一度目覚めてしまった修羅の心はいつか必ず生まれた場所に戻ってくる。

 

修羅の群れの中に戻ってくるのだ。

 

桜庭には、それがよく分かっていた。

 

血が血を引き寄せるとでもいうのだろうか。

 

今は嫌だと言っても、一年後は分からない。

 

三年後はもっと分からない。

 

「もう行っていい」

 

桜庭は運転手にそう言うと、静かに車を発進させた。

 

二人の横を通り過ぎる時、桜庭は不思議と藤堂四代目とその恋人である真琴の出会いを思い出していた。

 

どんなに逃げようともがき苦しんでも、真琴は決して藤堂の腕から逃れられなかった。

 

そして最後には自らの運命を受け入れ、藤堂を求めるようになった。

 

今では、裏の世界の人間なら誰でも聞いたことがある真琴も、数年前は田舎から出てきたばかりの何も知らない一般人だった。

 

三年間の間にきっと紅林組の組長を継ぐようにしてみせる。

 

きっとだ。

 

桜庭は心の中でそう呟いた。

 

そしてそんなこととはまったく知らない遼一は、最愛の宇宙の腰を抱きしめながら歩道を歩いていた。

 

今日はオープン初日を祝して、イタリアンレストランで食事をする約束をしているのだ。

 

だがウルトラスペシャルマッサージを受けた宇宙の足腰がフラフラで、今にも倒れてしまいそうである。

 

顔も上気していて、目は虚ろで、イッてしまったままの状態だった。

 

「大丈夫か?」

 

と、遼一が聞くと、宇宙は「うん、うん」と言って力なく頷いた。

 

これは大丈夫ではない。

 

イタリアンレストランは諦めたほうがよさそうである。

 

遼一は進路を変更して、コンビニに寄った。

 

そこでシャンパンとチーズ、クラッカー、生ハムなどを買い込むとそのまま帰路についた。

 

アパートで二人だけでのお祝いをしようと考えたのだ。

 

「イタリアンレストランに行かないの?」

 

まだ目が虚ろな宇宙が、コンビニで買い物をしている遼一に向かって聞く。

 

遼一は会計を済ませると、宇宙の手を引っ張ってそのままコンビニを出た。

 

「誰かさんの目が虚ろだからね。色っぽい顔をしてるし、その顔に誰かがそそられないとも限らない」

 

「・・・だって・・・それは・・・」

 

それは遼一の責任だよと、言いかけてやめた。

 

そんなことを言っても、遼一には勝てないことを知っている。

 

宇宙はそっと遼一の腕に手を絡ませた。

 

「アパートに着いたら二人だけでお祝いしよう」

 

「ああ、そうしよう」

 

遼一が優しく笑って頷く。

 

その男らしい笑顔を見て、宇宙は心の底からこの男性に出会えてよかったと思っていた。

 

巡り合えて愛し合えて本当によかった。

 

これから先、遼一と自分にどんな運命が待ち受けているか分からないが、ずっと遼一についていこうと心に誓った。

 

「ね、遼一。僕のこと愛してる?」

 

宇宙の可愛い問いに、遼一はふふっと笑った。

 

「さー、どうだろう?宇宙はどう思う?」

 

「もちろん、愛してる」

 

自信満々の宇宙の答えに、遼一はただ朗らかに笑っていた。

 

 

 

空には満天の星が輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

東京えっちナイト 8

桜庭は、店に入れずに困っていた。

 

窓のブラインドの隙間から、二人が激しく互いを求めている光景を見てしまったのだ。

 

男同士のセックスは、藤堂四代目とその恋人である真琴との行為で見慣れている。

 

だが見慣れているからといって、店の中に入っていく気にはならなかった。

 

「入らないのですか?」

 

ドアの前でしばらく考えている様子の桜庭に、部下の者が声をかける。

 

道端には黒い高級外車のベンツが止まっていた。

 

運転手がエンジンをかけたまま待っている。

 

スーツ姿の桜庭は、まだ若い部下には何も答えずに車の後部座席に戻った。

 

そして携帯を取り出し、リダイヤルを押す。

 

電話の相手は藤堂だった。

 

「私です。紅林組の跡目の件ですが、あと三年間待っていただくように紅林組の組長に話してもらえませんか?今は何を言っても無理だと思うのです。宇宙と遼一は深く愛し合っていて、組の存続よりも二人の未来や一緒の時間を過ごすことのほうが大事なのです。今は焦らず、しばらく時間をおいたほうがいいと思います」

 

桜庭はシルバーメタリックの携帯を握りしめ、店の中を見つめながら言葉を続けた。

 

「あちらの言い分もわかりますが、やはり遼一には時が必要です。今まで十年間という時を失っていた分、冷静になって自分を見つめ、この先どうするのかを考える時が必要です。二人で三年間暮らすうちに本来の自分を取り戻し、自分に課せられた運命からは逃れられないのだということを遼一は知るはずです。そうなれば、考えも変わるでしょう。その時に改めて話をしたほうがいいと思います。それに、一度目覚めた修羅の心がそう簡単には消えません」

 

桜庭がそう言うと、隣に部下が乗り込んだ。

 

二人のセックスが終わったと、手で合図する。

 

桜庭は無言で頷いた。

 

「はい、申し訳ありません。ではこのままもう一度戻ります」

 

桜庭はそう言って携帯を切った。

 

「四代目はなんとおっしゃってましたか?」

 

少し間を置いてから、桜庭の側近である男は聞いた。

 

桜庭は、らしくなく長いため息を漏らす。

 

「お前に任せたのだから最後まで任せるとおっしゃってくださった。紅林組の組長のほうには話をつけておくと」

 

「ですが、三年間の間に本当に結論が出るんですか?」

 

桜庭の右腕的存在のまだ若いその男は、慎重な口調で聞いた。

 

車の外から話を聞いていたのだ。

 

桜庭は横目で側近を見た。

 

「結論が出るようにいろいろと仕向けるつもりだ。店も今は景気がよさそうだが、いつだめになるとも限らない。どんな世界も一寸先は闇だからな」

 

桜庭が、何やら意味ありげに言う。

 

側近はその一言ですべて承知したのか、あとは何も聞かなかった。

 

マッサージ店を見ると、ちょうど電気が消えたところだった。

 

 

 

 

 

 

 

東京えっちナイト 7

遼一は宇宙を股間の上に跨がせると、そのまま腰を落とすように言った。

 

「・・・でも・・・恥ずかしい・・・」

 

ためらいながら、宇宙が少しだけ腰を落とす。

 

すると蕾に遼一の逞しい分身の先端が当たって、ビクッと身体を震わせた。

 

熱くて逞しくい遼一自身が、宇宙の蕾の中に入りたいと待ち構えている。

 

宇宙はいったん腰を引いてしまったが、すぐに欲望に従うように腰を落としていった。

 

「あんっ・・・太いっ」

 

思わず、宇宙が呻く。

 

亀頭の半分まで入っていた。

 

「もっと・・・深く・・・」

 

遼一が宇宙の腰を掴み、そのまま引き寄せる。

 

ズルンッと音がして、亀頭の部分が宇宙の蕾に入ってしまった。

 

「あぁぁ・・・・・」

 

「もっと腰を落として・・・。それじゃ宇宙がつらいだろう?」

 

中腰でしゃがんでいるような格好をしている宇宙に、遼一が笑いを含んだ声で言う。

 

だが宇宙は亀頭の感触に酔いしれていて、うまく答えられなかった。

 

「こうして、私の上にしゃがんでしまえば楽だろう?」

 

と、言った遼一が、宇宙の腰を思いきり引き寄せる。

 

その瞬間、ガクンッと膝が崩れて、宇宙の蕾は自身の重みで肉棒を深々とのみ込んでいた。

 

「あっ・・・あぁぁーーーーーーーっ」

 

「根元まで入ると気持ちいいだろう?」

 

「遼・・・ちゃ・・・ん・・・・・」

 

「少し、腰を揺らしてやろうか?」

 

「りょ・・・りょ・・・・・」

 

「それとも、ここを握ったまま下から突き上げてやろうか?」

 

宇宙の反応を面白そうに見上げながら分身を握り、遼一が言葉を続ける。

 

その言葉に答えることなどできないくらい、宇宙は感じてしまっていた。

 

昨夜よりもずっと逞しい遼一自身が宇宙の奥深くまでズンズンッと入ってくる。

 

ズンズン突き上げている。

 

「遼ちゃん・・・そんなにしたら・・・あっ・・・あっ・・・」

 

胸に両手をついて少しでも奥に入ってしまうのを防ごうとしている宇宙が、首を左右に振る。

 

こういう体位は初めてで、しかもウルトラスペシャルマッサージの後だったから、身体中のどこもかしこも感じすぎてしまっていた。

 

イッたばかりの分身も、いっこうに衰えない。

 

それどころか、下から突き上げられるたびに、先走りが溢れ、オイルと混じっていく。

 

「あんっ・・・あん・・・遼ちゃーん・・・死んじゃうよぉ・・・・・」

 

宇宙は、ヒクヒクと泣きながら分身の感触に身悶えていた。

 

一番感じる深くて柔らかい部分に、先端が当たっている。

 

宇宙の足の指先が、自然にピクピク痙攣する。

 

遼一のシルクのシャツを掴んでいる手に、力がこもっていく。

 

「あぁぁ・・・あん・・・死んじゃうっ」

 

だが面白いことに、宇宙の腰は自然と上下に揺れていた。

 

嫌だと言いながらも、身体はより深い快楽を求めて自ら肉棒をのみ込んでいた。

 

クチャクチャッと、宇宙の腰が上下に揺れるたびにいやらしい音が聞こえる。

 

そして宇宙の喘ぎ声も、途切れることなく店の中に響いている。

 

「遼ちゃん・・・お願い・・・もう・・・死んじゃう・・・・・」

 

「いいよ、死んじゃっても。どうせまたすぐに生き返って喘ぐんだから」

 

「あぁぁぁ・・・・・遼ちゃーん・・・・・」

 

宇宙は、ひときわ早く腰を動かして自分から絶頂の中に飛び込んでいった。

 

「知ってた宇宙?宇宙がイクとこね、ここがキュッと幾重にも締まって私に目眩がするような、経験がしたことがないような快感を与えてくれるんだ。ほら・・・ここがキュッと締まる・・・」

 

遼一はそう言って、腰を上げた宇宙との間に手を忍び込ませ、目いっぱい開いている蕾を指の腹で撫でてやる。

 

「あぁぁ・・・いいっ・・・遼ちゃん・・・いいよぉ・・・・・」

 

蕾の入り口を指の腹で触られた宇宙は、背筋にゾクッとするような快感を感じた。

 

分身を握られ、蕾に肉棒を挿入させられ、蕾の入り口を指の腹で弄られている宇宙に、絶頂感を押しとどめることはできなかった。

 

そのまま一気に高みへと昇っていく。

 

「あぁぁぁぁーーーーーーイクーーーーーーっ」

 

宇宙の張り上げた声が、店の中で響き渡る。

 

外にまで聞こえてしまうのではないだろうかというような、大きな喘ぎ声だった。

 

「遼ちゃーん・・・中が・・・中が・・・クチュクチュしてて・・・もうだめぇぇ・・・・・」

 

宇宙は絶頂感を十分に味わいながら、叫び続けた。

 

「あぁぁ・・・いいのぉ・・・すごくいいのぉぉ・・・・・」

 

だが遼一の分身はまだ元気なままだった。

 

宇宙のようには、まだ頂点を極めていない。

 

「宇宙、愛してるよ」

 

宇宙の乳首を指先で摘みながら、遼一はすべての想いを込めて言った。

 

「あんっ・・・遼ちゃーん・・・」

 

だが絶頂を味わっている宇宙には、その想いが伝わったかどうかは分からない。

 

だがそれでも遼一は、左右の乳首を摘み、指先で丹念に愛撫しながら言った。

 

「愛してる」

 

「遼・・・ちゃん・・・もう・・・も・・・・・」

 

宇宙は意識を失う寸前だった。

 

ビクビクッと下半身が震え、勃起したままの分身はピクピクと震えている。

 

指先で愛撫されている左右の乳首もツンっと突き出ていて、まるで強く吸われたようだった。

 

「遼・・・ちゃ・・・ん・・・・・」

 

意識を手放す寸前、宇宙は遼一の愛の囁きに応えるように遼一を呼んだ。

 

遼一はその言葉を聞きながら、満足したように再奥の部分に飛沫を吐いた。

 

ドクンドクンッと遼一の分身が激しく脈を打つ。

 

その脈が伝わったのか、宇宙は意識を失ってからも小さな声で喘いでいた。

 

グッタリと前のめりで倒れている宇宙の背中を優しくさすりながら、遼一は耳元で何度も囁いた。

 

「愛してる」

 

自分で囁いているその言葉を聞きながら、遼一は安息の一時を味わうようにゆっくりと瞼を閉じていった。