東京スペシャルナイト 上 12

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「八時からご予約の春日様?」

 

宇宙の名前が呼ばれる。

 

営業時間は八時までなのに、どうして桜井さんは八時に予約を入れたんだろうか?

 

個室に案内されながら、宇宙は思った。

 

「ではここで、ガウンに着替えてお待ちください」

 

受付の女性が丁寧に言って、ドアを閉める。

 

宇宙はいつものようにハンガーに掛かっているガウンに着替え、白いシングルサイズのベッドに仰向けになった。

 

なんでだろう?

 

宇宙は、まだ悩んでいた。

 

他の個室からは次々と最後のお客さんたちが帰っていく音がしている。

 

この時間に個室に入る客など、誰もいない。

 

「桜井さん、人気があって指名が多いから、きっとこの時間しか予約が取れなかったんだ」

 

宇宙は、素直にそう思った。

 

「お待たせいたしました」

 

最後の客を見送った桜井が、ドアをノックして入ってきた。

 

「あの、桜井さん。すみません。時間外の予約だったんですね」

 

桜井の顔を見るなり、宇宙は起き上がって言った。

 

桜井は男らしい顔で笑って、ゆっくりと首を振る。

 

「そんなこと、気にしなくていいんですよ。それより、今日は特別なメニューがあるんですけど、試してみますか?」

 

腕から肩をマッサージしながら、桜井が言う。

 

「特別なメニューですか?」

 

宇宙は、桜井に身体をすっかり預けながら不思議そうな顔をした。

 

「スペシャルマッサージと言って、特別なお客様限定のメニューなんです」

 

「特別なお客様限定?」

 

なんだかとっても、いい響きである。

 

特別なお客様っていうところがいいなー。

 

「どうなさいますか?スペシャルマッサージ、やってみます?料金は前回と同じですから、ご心配なく・・・」

 

「あっ、そうなんですか。じゃあ・・・お願いします」

 

宇宙は、スペシャルマッサージというものがどんなものであるか、まったく知らないままOKの返事をした。

 

きっと今まで以上に、すっごく気持ちよくリラックスできる、そんなマッサージに違いない。

 

すると桜井は、肩と首のマッサージをやめて、宇宙が着ているガウンの紐を解いていった。

 

紐が解かれ、あっという間に宇宙の上半身があらわになる。

 

買ったばかりのトランクスは、チェック柄だった。

 

「あっ・・・あの?・・・」

 

宇宙は、どうして桜井がガウンの紐を解いたのか分からなかった。

 

不思議そうな顔をしたまま、桜井の次の行動を見守る。

 

桜井は、興味津々な宇宙の視線の中、思わず行動に出た。

 

なんと、トランクスまで一気に脱がせてしまったのだ。

 

「き、きゃっ!」

 

女のような悲鳴を上げて、宇宙が露出した股間を両手で隠す。

 

膝まで一気に脱がされたトランクスをなんとか片手で引きあげようとしたが、桜井がそれを阻止した。

 

「ダメです。裸にならないとスペシャルマッサージを受けることはできませんよ」

 

「で、でも・・・」

 

不安げな顔で、宇宙が股間を両手で覆い隠す。

 

それでも宇宙には、スペシャルマッサージというものがどういうものなのか、まったく見当もつかなかった。

 

どうして裸になるんだろう?

 

しかもトランクスまで脱がされちゃって。

 

こんな真っ裸状態でマッサージを受けるなんて。

 

いったい、どんなマッサージなんだ?

 

宇宙は顔を真っ赤にしたまま、さまざまなことを考えていた。

 

だが、どうしても答えが見つからない。

 

そんな宇宙を優しく見守っていた桜井は、手の中にたっぷりとマッサージオイルを落とした。

 

そしてその手で、裸になった宇宙の上半身をゆっくりと摩り、手のひらと指先でマッサージをしていく。

 

「何も心配しなくていいですよ。いつものようにリラックスして・・・身体中から力を抜いてください」

 

桜井にそう言われたものの、こんな状態ではなかなかリラックスなどできない。

 

確かにいつものマッサージとは違って、生温かいヌルヌルとした感触がとても気持ちいいけど。

 

でもなんだか、桜井さんの手のひらや指先が首筋や乳首に触れるたびに、変な気分になってきてしまう。

 

エステでオイルマッサージをしてもらっている女性のような感じだけど、でもなんだかちょっと違うような・・・・・・。

 

「・・・あっ・・・」

 

宇宙は、考えるよりも早く、声を上げてベッドの上でのけ反った。

 

桜井のオイルがたっぷりと付着した指先が、乳首をきつく摘んだためであった。

 

「痛いですか?」

 

すぐに桜井が聞いてくる。

 

宇宙は、真っ赤な顔で股間を隠しながら、無言のまま首を横に振った。

 

痛いんじゃなくて、気持ちよかったからつい声を上げてしまったなんて、とても言えない。

 

「では・・・気持ちがいいということですか?」

 

桜井が、クスクスッと笑いながら宇宙の耳元で聞いた。

 

その声があまりに近かったことに驚き、宇宙が瞑っていた目をあけた。

 

するとすぐ目の前に、桜井の男らしく整った顔があった。

 

反町に似ている、セクシーで甘いマスクがあるのだ。

 

しかも唇なんて、ちょっと顔をずらせばキスできちゃいそうな距離だった。

 

うそぉぉーーーーーー!

 

宇宙は、心の中で驚きの声を上げていた。

 

「もう少し、気持ちよくなりたいですか?」

 

桜井が、宇宙の頬に唇を近づけて甘い声で囁く。

 

宇宙は、触れるか触れないかぐらいにかすかな桜井の唇の感触に、頭の中がクラクラしてきた。