東京ハードナイト 27
「何これ?いやいやっ・・・いやですぅぅ・・・・・」
噎せるような麝香の香りに酔いながら、由一は自分が自分でなくなってしまう恐ろしさに首を振った。
だがもう遅かった。
由一の身体に塗られたのはボディソープではなくて、実は中国から密輸入された即効性の『媚薬』だったのだ。
しかもごく一部の金持ちしか入手することができない、極上品だったのだ。
「この媚薬は、人間の五感を何倍にもしてくれる媚薬だそうだ。苦痛を与えれば苦痛が何倍にも感じ、快感を与えれば快感が何倍にもなって襲ってくる。どうだ?気持ちいいだろう?」
堂本は、片目を細めて冷静な声で言った。
「あっ・・・いやいやっ・・・いやですぅ。こんな媚薬は・・・いやぁぁぁ・・・・・」
由一は、自分ではどうしようもない初めての快感に身悶え、激しく喘ぎながら、なんとか身体に塗られたボディソープを落とそうとする。
だが由一が手や指で触れれば触れるほど、身体が跳ね上がるほどの猛烈な快感が波のように押し寄せ、由一のわずかに残っていた理性を食い破っていく。
「あんっ・・・あん・・・ああぁぁぁーーーーーんっ」
まるで赤ちゃんが泣くような喘ぎ声が、由一の口から零れ落ちていく。
全身、どこもかしこも感じてしまって、どうしていいのか分からない状態だった。
特に敏感な乳首と分身、そして蕾の奥の方などは、もうまったく別の生き物と化していた。
ちょっと動いただけで蕾の内部が蠢き、肉襞がピクピクと痙攣するように、由一に今までにない快感を与えていくのだ。
分身の先端の割れ目から中に入った媚薬は、ゾワゾワとするような快感を与え続けている。
乳首は、さっきまで引っ張られていたせいか、まるで無数の針に刺されているような、痛痒い快感を由一の脳に送り続けた。
「あーーーーーんっ・・・死んじゃうっ!身体が・・・・・壊れちゃうっ!」まさしくその通りだった。
自分身体なのにまったく制御が利かない。
失神してしまいそうな快感が、どんどんエスカレートしていく。
しかも堂本は、一人で身悶え今にも半狂乱になりそうな由一の肌に触れ、ゆっくり手のひらで洗い始めたのだ。
「あぁぁぁーーーーーっっ、だめぇぇぇーーーーーっ」
と、由一がものすごい叫び声を上げて下半身をピクンピクンッと痙攣させても、堂本は肌に触れることをやめなかった。
「・・・死んじゃうっ!死んじゃうっ!」
由一が続けざまに叫ぶ。
だが堂本はそんな由一を楽しむかのように分身を捕らえて握り締めると、クチャクチャッと音を立てて手を揺らし始めた。
見る見るうちに泡が立ち、由一の分身が泡まみれになっていく。
「あっ・・・あっ・・・イッ・・・・・」
と、言うが早いか、由一は上下に二、三度揺らされただけでイッてしまった。
乳白色の泡の中に由一の飛沫が飛び散る。
「ーーーーーんんっーーーーーくぅーーーーー」
と、絶頂感を噛み締めるような喘ぎ声が漏れる。
いつもだったら三十秒ほど、絶頂感を噛み締めるだけで終わるのだが、この媚薬入りのボディソープはそれを許さない効力を秘めた薬だった。
ピクンッと、分身を震わせて絶頂感に耐えていても、いっこうにそれが引いていかないのだ。一分たっても、二分たっても、三分たっても絶頂感は由一を襲ったままだった。
「ひぃぃぃーーーーーううぅーーーーー」
その苦しさは、息が止まるくらいのものだった。
快感の極みが一転して、苦痛になる。
唾液で濡れて光っている由一の唇からは、聞きなれない変な喘ぎ声が漏れた。
「・・・そんな気持ちいいのか?」
と、フフッと笑いながら堂本がなおも指を奥の方に滑り込ませる。
ボディソープの助けを借りた堂本の指は、大きく開いた股の中心にある一点に到達した。
そこは、さっきから掻き毟りたいほどにジンジンとしている箇所だった。
特に中の方が、熱くて痒くて堪らないのだ。
掻き毟りたくても、そんなとこ、どうやって掻いたらいいのか分からない。
「・・・・・ここも、疼いているんじゃないのか?」
堂本の問いに、由一は涙をポロポロッと零しながら何度も頷いて応えた。
まったく遠のいていかない絶頂感と苦痛が、交互になって由一を苦しめている。
そんななかで由一にできることは、ただ喘いで堂本の言葉に素直に答えることだけだった。
「どうしてほしいのか、言ってみろ」
と、聞かれ、由一はすぐに『痒いっ。中が痒いの・・・』と切なそうに答えた。
「痒い?それだけでは分からないな」
口端を上げて意地悪い表情で堂本が言うと、由一は自分から堂本の指を蕾の入り口に押し当てて、叫んだ。
「痒いから・・・なんとかしてくださいっ。もう・・・気が変になっちゃいますぅぅぅ・・・」
と、自分から腰を揺らしていく。
堂本はそんな由一をしばらく楽しんでから、やっと二本の指で由一の蕾の入り口を割った。
そして媚薬入りのボディソープで中がグチャグチャになっている蕾に、どんどん指を挿入していく。
「あぁぁぁーーーーーいいっ」
驚いたことに、初めて挿入するにもかかわらず、由一の蕾はぐんぐん引き寄せるように奥の方へと堂本の指を招き入れていった。
初めてのはずだったのに、苦痛はまったくない。
あるのは、指を入れられたことによって痒い部分に触れてもらえる、快感だけだった。
「あんっあんっ、ああーん」
指の先端が、由一のずっと奥の方に入り込み、当たる。
それだけで由一は今にも昇天してしまいそうな破廉恥な声を上げて、大理石の上で腰を揺すった。
「そこっーーーーーああーんそこそこっ」
由一は指を動かし『そこ』と由一が言った箇所を突っ突くと、蕾の中からは細かい泡が溢れ出てきた。
「いいっ・・・そこっ・・・・・もっと」
堂本の指を欲して、由一が腰をくねらせて身悶える。
蕾ばかりではなく由一の股間全体が泡だらけになっていた。
そしていつの間にか由一は、自分の手で絶頂感が引いていかない分身をクチュクチュといやらしい音を立てて弄っているのだ。
堂本は、そんな由一を見て、ニヤッと美麗な方の顔で笑った。
傷がある醜い顔はそのままだったが、口元だけは笑っていた。
こうして身も心も解き放ち、すべてを忘れて快楽に身を沈めてこそ、ヤクザの本物の情夫になれるのだ。
羞恥心や自分の理性を制御してしまう冷静な自分などは、一切いらない。
ヤクザに抱かれるということはこういうことなのだと、堂本は教えようとしていた。
抵抗も口答えも恥じらいもいらないのだ。
堂本が目の前で失禁してみせろと言ったら、その言葉だけを信じてやって見せるような陶酔しきった愛情がなければならないのだ。
そうでなければこれから先、ヤクザの情夫はとてもじゃないが務まらないし、つらいだけなのだ。
あの、藤堂四代目の情夫として、今では夜のネオンの世界に君臨している真琴は、骨の髄まで藤堂を愛している。
藤堂だけを信じ、藤堂だけを愛し、藤堂だけに足を開くのだ。
藤堂の命令だったら、きっとどんなことにでも従うだろう。
じっくりとそう教育され、そのある種特別な愛情を受け入れ、そして成功している。
ヤクザの情夫としての幸せはたった一つ。
相手のヤクザから、身も心も心底愛されること。
それだけだった。
そのためだけにありとあらゆる快楽を経験し、それを身につけ、そしてそれを武器にして愛情を勝ち取っていくのだ。
堂本は、由一にも真琴と同じように、情夫でありながら決して色に流されることのない強い自分を持っている、賢くて美しい情夫になってほしいと願っていた。