東京スペシャルナイト 上 5

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宇宙の切羽詰まった緊張感をよそに、最後に頭のツボを軽く圧して、マッサージが終了してしまう。

 

「はい、これで終わりです。ゆっくり起きてください」

 

と、マッサージ師に言われて、宇宙はゆっくりとベッドの上で起き上がる。

 

よかった。仰向けでマッサージなんてないんだ。

 

宇宙は心底ホッとした。

 

だが、背中を向けたままマッサージ師のほうを向こうとはしなかった。

 

「あ、ありがとうございました」

 

壁に向かって、ペコッと頭を下げて宇宙が礼を言う。

 

そんな宇宙を不思議に思ったマッサージ師だったが、すぐに何かに気づいたのか優しく肩に触れた。

 

「リラックスして・・・・・ゆっくり着替えてから出てきてください」

 

そう言ってマッサージ師が部屋を出ていく。

 

マッサージ師は、いつまでも背中を向けている宇宙の様子を見て、すぐにその理由を理解していたのだ。

 

だがそれを口にすることなく、部屋を出ていってくれた。

 

宇宙は、バタンとドアが閉まったのを確認してから慌ててガウンを脱ぎ、股間に視線を落とした。

 

案の定、宇宙の股間は見事に天を仰いでいた。

 

しかも先端の割れ目からは先走りまで出ていたのだ。

 

ということはガウンが濡れている?

 

脱いだばかりのガウンを確かめると、やはり股間に染みがついていた。

 

「・・・・・・よかった。あのまま振り返っていたら、あそこが濡れていたの分かっちゃってたよ。これじゃあ、超変態教師だよ。まったく。」

 

自分の先端を指先でピーンッと弾きながら、呆れたようにため息を漏らす。

 

そういえば、教職に就いてからというもの、毎日疲れていてこんなに見事に勃起したことなんてなかったよな。

 

こんな元気な自身を見るのは何カ月ぶりだろうか。

 

宇宙は、しばらくそんなことを考えながら息子と対面していた。

 

だがいつまでもこんなことなどしていられない。

 

早く部屋から出て、会計を済ませなければ。

 

宇宙はこの状況を静めるべく、学校の悪魔たちの顔を思い浮かべた。

 

すると見る見るうちに、分身が萎えていく。

 

「効き目抜群だよね。最初からこうすればよかった」

 

宇宙はそんなことを呟きながら急いでスーツに着替え、部屋を出た。

 

フロアに出ると、先ほどのマッサージ師が待っていてくれた。

 

こうして見ると、とても背が高い。

 

それにやっぱり、超カッコイイ。

 

「ありがとうございました」

 

「あ、あのっ。また来てもいいですか?」

 

料金を支払った宇宙が、マッサージ師に聞く。

 

こんな聞き方って変だと自分でも思っていたが、つい口から出てしまった。

 

マッサージ師は男前の顔で優しく笑っていて「いつでもいらしてください」と言ってくれた。

 

「指名料金は三〇〇円ですが・・・私でよければいつでも指名してください」

 

と言って、マッサージ師は名刺を手渡す。

 

名刺には、リラクセーションマッサージ『フィジカル』桜井遼一と明記されていた。

 

反町似のマッサージ師は、桜井遼一という名前だった。

 

桜井遼一。

 

なんか、とってもいい響きの名前だと宇宙は思った。

 

「は、はい。今度は絶対に指名します」

 

と、嬉しそうに返事をして名刺をポケットに入れた宇宙は、そのままエレベーターに乗る。

 

ドアが閉まるまで見送ってくれたマッサージ師に何度も頭を下げながら、宇宙は今まで感じたことのない、胸がドキドキするような感情に浸っていた。

 

それに、あんなに溜まっていた疲れもどこかに吹っ飛んでしまっていた。

 

エレベーターの中の鏡に映っている自分を見ても、さっきと全然違うのが分かる。

 

希望と愛と覇気に満ちている自分がいる。

 

ヨレッとしていたスーツもどこかシャキッとしているように感じる。

 

身体ばかりか、心までも軽く明るくなったような気がするのだ。

 

宇宙は、本当にここに来てよかったと心から思った。

 

そしてまた絶対に桜井遼一さんを指名するんだと、心に誓っていた。

 

宇宙は、たった一度でリラクセーションマッサージと桜井遼一の虜になっていた。