東京スペシャルナイト 上 4

摩られている背中からその手の温もりを感じた宇宙は、なんだかとても嬉しくなってしまった。

 

この格好いいマッサージ師に、肩や背中や腰をマッサージしてもらえるなんて、なんて幸せなんだろうか。

 

別にどこという箇所はないのだけれど、できればずっと摩っててほしいな。

 

そんなことまで考えてしまう。

 

「あの、全体的にお願いします」

 

宇宙は今自分が考えている、ちょっとエッチなことを悟られないように、冷静な声でそう言った。

 

男性のマッサージ師に摩られていることに幸せを感じてしまうなんて、ちょっと変じゃないだろうか?

 

やっぱり、相当疲れているんだ。

 

きっとそうだ。

 

宇宙は、そんなことを考えながら、落ち着かない自分の感情をなんとか整理しようとしていた。

 

「では、楽にしててください。肩と首からいきます」

 

「はい」

 

マッサージ師がベッドの上に上がり、腰を跨いだのが分かる。

 

親指の指圧で、肩のポイントをググッと圧していく。

 

「・・・あっ・・・・・痛っ」

 

「強いですか?  では・・・このくらいは?」

 

少し力を抜いて、マッサージ師が肩から背中をゆっくりと指圧する。

 

今度は痛いけれど、それすらもとても気持ちがいい強さだった。

 

「あっ・・・いいです。そのくらいで・・・ぁっ・・・」

 

ツボを心得たマッサージ師の指が、宇宙の気持ちいいところを探り当てて、どんどん揉みほぐしていく。

 

そのたびに宇宙は、苦痛と快感が入り交じったような、ちょっと色っぽい声を漏らしてしまっていた。

 

いけないと思っても、指圧されるとどうしても口から色っぽい声が出てしまうのだ。

 

しかも、気持ちいいという感情を素直に表した声が。

 

「・・・そんなに気持ちいいですか?」

 

クスッと柔らかく笑ったマッサージ師の声が、頭の上から降りてくる。

 

「はっ・・・はい・・・あんっ・・・」

 

返事をしようと口を開くと、圧されたポイントと重なって、今までにない卑猥な声が出てしまった。

 

慌てて口を閉じたが、宇宙が発したまるでエッチをしているときのような喘ぎ声は、しつかりとマッサージ師に聞かれていた。

 

クススッと、ふんわりとした笑い声が降りてくる。

 

宇宙は、ベッドに開いている穴の中に顔を埋め、床をじっと見つめたまま顔を真っ赤にしていた。

 

だって、本当に気持ちいいんだもん。

 

どうしても声が出てしまうんだもん。

 

恥ずかしくて、穴があったら入りたい心境の中で(実際にはもう穴の中に顔を入れているが)宇宙は驚くべき身体の変化を感じ取っていた。

 

なんと、自分の股間にある男性のシンボルが、著しく硬くなり始めていたのだ。

 

うつ伏せで寝ているからマッサージ師には分からないだろうが、ベッドと腹の間で、宇宙の分身はムクムクと頭を擡げていた。

 

うそーーーーーっ!

 

宇宙は絶叫したい心境だった。

 

ただマッサージを受けているだけなのに、どうしてあんなところが勃起しちゃうの?

 

しかもマッサージをしてくれているのは、いくら格好よくてもれっきとした男性で、女性が奉仕してくれるエッチなマッサージとは全然違うのに。

 

こらっ。

 

静まれ。

 

僕の分身、冷静になって静まりなさいっ!

 

お前の行動は間違っているぞ。

 

どうして今ここで、勃起しなくちゃならないんだ?

 

相手は男だぞ、分かっているのか?

 

と、いくら心の中で自身に問いかけ叱咤しても、宇宙の分身は柔らかくはならなかった。

 

それどころか、マッサージが進むにつれ、どんどん硬くなっていく。

 

今マッサージ師に『それでは、仰向けに寝てください』なんて言われてしまったら、きっと勃起した分身が下からガウンを突き上げて、股間にテントを張ってしまって、エッチなことを考えていたことが明白になってしまうじゃないか。

 

だめだ、そんなことは絶対にだめだ。

 

僕は教育者だし、第一、こんなことで勃起していたら変態男と思われてしまうじゃないか。

 

こんな自分を見られてしまったら、もうここに来られなくなってしまう。

 

反町似のステキなマッサージ師さんに、もう会えなくなってしまう。

 

だから、静まりなさいって。

 

頼むから、ねっ!?

 

宇宙の意識はもう、下半身にばかり集中していた。

 

どうしよう、どうしようっ!

 

勃起したまま、全然収まらないっ。

 

「もうすぐ、終わりますから」

 

可愛い声を漏らさなくなった宇宙に、マッサージ師が優しく言う。

 

「は、はいっ」

 

宇宙は、もう終わってしまうのかと、気が気ではなかった。

 

早く静まってくれないと、勃起したことがバレてしまうじゃないか。

 

このままでは変態教師だと思われてしまう。

 

ど、どうしよう!