東京スペシャルナイト 上 4
- 2015年12月11日
- 小説, 東京スペシャルナイト
摩られている背中からその手の温もりを感じた宇宙は、なんだかとても嬉しくなってしまった。
この格好いいマッサージ師に、肩や背中や腰をマッサージしてもらえるなんて、なんて幸せなんだろうか。
別にどこという箇所はないのだけれど、できればずっと摩っててほしいな。
そんなことまで考えてしまう。
「あの、全体的にお願いします」
宇宙は今自分が考えている、ちょっとエッチなことを悟られないように、冷静な声でそう言った。
男性のマッサージ師に摩られていることに幸せを感じてしまうなんて、ちょっと変じゃないだろうか?
やっぱり、相当疲れているんだ。
きっとそうだ。
宇宙は、そんなことを考えながら、落ち着かない自分の感情をなんとか整理しようとしていた。
「では、楽にしててください。肩と首からいきます」
「はい」
マッサージ師がベッドの上に上がり、腰を跨いだのが分かる。
親指の指圧で、肩のポイントをググッと圧していく。
「・・・あっ・・・・・痛っ」
「強いですか? では・・・このくらいは?」
少し力を抜いて、マッサージ師が肩から背中をゆっくりと指圧する。
今度は痛いけれど、それすらもとても気持ちがいい強さだった。
「あっ・・・いいです。そのくらいで・・・ぁっ・・・」
ツボを心得たマッサージ師の指が、宇宙の気持ちいいところを探り当てて、どんどん揉みほぐしていく。
そのたびに宇宙は、苦痛と快感が入り交じったような、ちょっと色っぽい声を漏らしてしまっていた。
いけないと思っても、指圧されるとどうしても口から色っぽい声が出てしまうのだ。
しかも、気持ちいいという感情を素直に表した声が。
「・・・そんなに気持ちいいですか?」
クスッと柔らかく笑ったマッサージ師の声が、頭の上から降りてくる。
「はっ・・・はい・・・あんっ・・・」
返事をしようと口を開くと、圧されたポイントと重なって、今までにない卑猥な声が出てしまった。
慌てて口を閉じたが、宇宙が発したまるでエッチをしているときのような喘ぎ声は、しつかりとマッサージ師に聞かれていた。
クススッと、ふんわりとした笑い声が降りてくる。
宇宙は、ベッドに開いている穴の中に顔を埋め、床をじっと見つめたまま顔を真っ赤にしていた。
だって、本当に気持ちいいんだもん。
どうしても声が出てしまうんだもん。
恥ずかしくて、穴があったら入りたい心境の中で(実際にはもう穴の中に顔を入れているが)宇宙は驚くべき身体の変化を感じ取っていた。
なんと、自分の股間にある男性のシンボルが、著しく硬くなり始めていたのだ。
うつ伏せで寝ているからマッサージ師には分からないだろうが、ベッドと腹の間で、宇宙の分身はムクムクと頭を擡げていた。
うそーーーーーっ!
宇宙は絶叫したい心境だった。
ただマッサージを受けているだけなのに、どうしてあんなところが勃起しちゃうの?
しかもマッサージをしてくれているのは、いくら格好よくてもれっきとした男性で、女性が奉仕してくれるエッチなマッサージとは全然違うのに。
こらっ。
静まれ。
僕の分身、冷静になって静まりなさいっ!
お前の行動は間違っているぞ。
どうして今ここで、勃起しなくちゃならないんだ?
相手は男だぞ、分かっているのか?
と、いくら心の中で自身に問いかけ叱咤しても、宇宙の分身は柔らかくはならなかった。
それどころか、マッサージが進むにつれ、どんどん硬くなっていく。
今マッサージ師に『それでは、仰向けに寝てください』なんて言われてしまったら、きっと勃起した分身が下からガウンを突き上げて、股間にテントを張ってしまって、エッチなことを考えていたことが明白になってしまうじゃないか。
だめだ、そんなことは絶対にだめだ。
僕は教育者だし、第一、こんなことで勃起していたら変態男と思われてしまうじゃないか。
こんな自分を見られてしまったら、もうここに来られなくなってしまう。
反町似のステキなマッサージ師さんに、もう会えなくなってしまう。
だから、静まりなさいって。
頼むから、ねっ!?
宇宙の意識はもう、下半身にばかり集中していた。
どうしよう、どうしようっ!
勃起したまま、全然収まらないっ。
「もうすぐ、終わりますから」
可愛い声を漏らさなくなった宇宙に、マッサージ師が優しく言う。
「は、はいっ」
宇宙は、もう終わってしまうのかと、気が気ではなかった。
早く静まってくれないと、勃起したことがバレてしまうじゃないか。
このままでは変態教師だと思われてしまう。
ど、どうしよう!