東京スペシャルナイト 上 35

ベッドに宇宙の身体を押し倒した桜井は、無我夢中で宇宙の身体を愛撫した。

 

仰向けで寝ている宇宙の両脚を性急に割り開くと、そのまま顔を埋めていく。

 

「あっ・・・桜井さん・・・あぁ・・・・・」

 

桜井の舌と唇が、ピクッと震えている分身を再び激しく愛撫していく。

 

「あっ・・・あっ・・・あっ・・・・・」

 

遠慮のない、激しい桜井の愛撫。

 

宇宙の何もかもすべてを自分のものにするような狂おしい愛撫。

 

「あっ・・・あっ・・・だめぇ・・・あぁぁーーーーーーーっ」

 

宇宙は、そんな愛撫に追い上げられるようにして頂点へと達していた。

 

桜井の口中に、宇宙の体液が迸っているのが分かる。

 

「あっ・・・・・あっ・・・・・」

 

途切れ途切れの、宇宙の喘ぎ声。

 

その声に合わせるように、桜井が宇宙が放ったものを飲み干していく。

 

宇宙は絶頂期の余韻の中、ただ必死に首を左右に振っているしかなかった。

 

何も考えられない。

 

何もできない。

 

もう、もうーーーーーー。

 

あまりの気持ちよさに、気が遠くなっていくのが分かる。

 

宇宙は自分で意識が遠のくのを、唇を噛むようにしてくい止めた。

 

すると桜井がそれに気づき、そっと唇に指先で触れる。

 

「そんなにしたら、唇が切れてしまいますよ」

 

やんわりと包み込むような優しい声だった。

 

まだ快感の余韻の中をさまよっていた宇宙が、うっすらと目をあける。

 

そこには、優しく微笑む桜井の姿があった。

 

その姿があまりにも凛々しくて美しくて、そして男らしくて、宇宙は涙が出そうになってしまった。

 

今まで出会ったどんな男より、かっこいい。

 

優しさの中にも威厳や品というものがあって、決してヤクザまがいの男に囲われているようには見えない。

 

やっぱり、桜井さんは僕が助けてあげなくちゃいけない。

 

今のままじゃ、絶対にだめだ。

 

僕がなんとしても、桜井さんを今の囲われ者の立場から救ってやるっ。

 

宇宙は涙を流しながら、心の中でそう思った。

 

不思議と恐怖や戦慄といった感情はなかった。

 

あのチンピラたちと闘わなければいけないかもしれないというのに。

 

いいや、闘う前にやられちゃうかもしれないのに。

 

それなのに、今の宇宙にはいっさいの恐怖心はなかった。

 

それどころか、とても充実している。

 

なんだろう、この幸せは。

 

どうしてこんなときにこんなに幸せな気持ちになれるんだろう。

 

もしかしたら、明日仲よく死んじゃってるかもしれないのに。

 

「僕・・・・・今・・・・・このまま死んでもいいと思った」

 

宇宙は、桜井の首に腕を回して引き寄せるようにして耳元で囁いた。

 

その囁きが、ゾクリとするくらい色っぽくて可愛くて、桜井の心を鷲掴みにした。

 

首に回っている宇宙の腕が、愛していると伝えてくる。

 

見上げる熱い眼差しが、本気だと訴えている。

 

かすかに震える唇が、愛していると告げている。

 

桜井は、そんな宇宙の想いのすべてを受け止めるように、きつく身体を抱きしめた。

 

「桜井さん・・・」

 

「こんなときぐらい、遼一って呼んでほしいんですけど・・・」

 

少し間を置いてから、耳元で宇宙が囁く。

 

「だったら、遼一もこんなときぐらい他人行儀なしゃべり方はやめてよ。僕はもうお店の客じゃないんだから。遼一の恋人なんだから・・・」

 

と言って、宇宙が耳たぶを軽く噛む。

 

その感触がゾクリとするくらい感じてしまう。

 

耳を軽く噛まれただけなのに、身体が溶けてしまいそうなくらい感じてしまうなんて。

 

このまま一緒に、ここで死んでしまってもいいと思うなんて。

 

桜井にとって、それは初めての感情だった。

 

「もう、離さないよ。ずっと・・・ずっと一緒にいよう」

 

「・・・うん。ずっと一緒・・・」

 

宇宙の目尻から、涙が一筋、耳に零れおちた。

 

「この先、たとえどんな運命が 待ち受けていても・・・私たちはずっと一緒だよ」

 

ギュッと宇宙の身体を抱きしめたまま桜井が力強く言う。

 

宇宙は嬉しくて嬉しくて、また涙を流してしまった。

 

「・・・うん、ずっと一緒・・・。もう・・・ 離れないっ」

 

桜井は狂おしく求めてくる宇宙に、激しいディープキスを与えた。

 

「・・・んっ・・・はぁ・・・・・」

 

噎せるような、激しいキス。

 

唾液が混じり合い、口端から滴り落ちるような淫らなキス。

 

だが宇宙はそんなキスが嬉しくてたまらない。

 

口中で混じり合う桜井の唾液が、愛しくてたまらない。

 

口端から流れ落ちる、唾液の一滴までもが愛しかった。

 

「・・・遼一・・・このまま遼一に抱かれたい・・・」

 

宇宙はそう言うのがやっとだった。

 

後はもう、言葉にならない。

 

言葉にならないくらい、遼一がすき。

 

遼一を愛してる。

 

「宇宙・・・ そのまま足を開いて・・・じっとしてて・・・」

 

遼一が、宇宙の蕾に指を這わせ、そに感触を確かめながら言った。

 

宇宙は言われたとおり、両脚を左右に大きく広げたまま、蕾の中に浸入してくる指を感じていた。

 

「あんっ・・・遼一っ・・・」

 

指が一本、半分まで入る。

 

「あぁぁ・・・・・」

 

そして、少しずつ進んだ指が全部宇宙の中に入る。

 

温かい蕾の内部は少しだけ濡れ、そしてまわりの肉壁が柔らかくほぐれていた。

 

以前のウルトラスペシャルマッサージのおかげかもしれないと、遼一は内心思った。

 

もう、遼一の分身を受け入れる準備ができているのだ。

 

遼一は、中を指の腹で弄るように動かしながら、宇宙の感度を確かめた。

 

「あんっ・・・ 遼一っ・・・だめ・・・」

 

と、宇宙が甘い声を上げ、枕の上でのけ反る。

 

その様子を見ていた遼一は、もう十分だろうと思い指を引き抜いた。

 

ヌルンッとした感触が、閉じていた宇宙の目を開かせる。

 

「遼一・・・」

 

「大丈夫。今、あげるから・・・」

 

と、優しく言って遼一が宇宙の脚を高く揚げる。

 

そして剥き出しになった蕾に、大きくなった遼一自身の先端を押し当てる。

 

遼一の分身も、もうすっかり濡れてしまっていた。

 

このまま入れてもあまり痛みはないかもしれない。

 

遼一はそう思いながら、少しだけ腰に力を入れた。

 

「あぁぁーんっ」

 

亀頭の先の部分が、少しだけ蕾に入る。

 

ヌルンッとして大きく開かれるような感触だけが、宇宙を覆っていた。

 

苦痛を感じている様子はない。

 

遼一は注意深く腰を進めると、もう少しだけ分身を挿入してみた。

 

「あんっ!」

 

明らかに、さっきとは違う声の喘ぎ声が上がる。

 

その声には、もっと奥へと誘うような、もっと強く訴えるような色香が漂っていた。

 

「このまま奥まで入れるよ。いい?」

 

丁寧な言葉遣いをやめた遼一が、宇宙の項に舌を這わせながら聞く。

 

宇宙は、大きく反り返るように喘いだまま『うん』と小さい声で返事をした。

 

すると、遼一の逞しい分身が、今度は狭い内部を押し開くように入り込んでくる。

 

「あっ・・・あっ・・・あぁぁ・・・・・」

 

もっと大きく宇宙がのけ反る。

 

「もっと、深く入れるよ?」

 

と、遼一が耳の下の首筋を舐めながら囁く。

 

宇宙は、今度は返事ができなかった。

 

亀頭の部分がすっぽり入ったその感触に、喘ぐのに精いっぱいだったのだ。

 

「あうっ・・・あっ・・・くぅぅ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京スペシャルナイト 上 34

初めての桜井の口からの愛撫は、今までのスペシャルマッサージやウルトラスペシャルマッサージとは、全然比べものにならないくらい気持ちよかった。

 

確かにウルトラスペシャルマッサージも、初めての快感で何度も絶頂を極めたが、この口中の感触はまた別格だった。

 

ねっとりとしていて温かくて、のみ込まれていく分身が思わずフニャンとなってしまうくらい気持ちいいっ。

 

窄めた唇が亀頭部分を何度も責める。

 

そにたびに、宇宙は今にも果ててしまいそうな喘ぎ声を上げて腰を揺らしていた。

 

「あんっ・・・あぁ・・・・・」

 

根元を、キュッと指先で押さえた指の加減もちょうどいい。

 

「あぁぁ・・・あっ・・・あっ・・・・・」

 

桜井の頭がゆっくりと上下に揺れるたびに、クチャクチャと淫らな音がする。

 

「あんっ・・・桜井さん・・・だめぇぇ・・・・・」

 

桜井の舌先が、先端の割れ目に入る。

 

性感帯を直接触れられたようなその感触に、思わず宇宙の下半身がベッドから跳ね上がる。

 

「ああーん・・・っ」

 

口中の宇宙自身も、ピクピクッと震えている。

 

桜井は、もっともっと時間をかけて宇宙の分身の味を楽しみたかった。

 

だが、そうもしていられない。

 

恭也があのまま引き下がるとはとても思えなかったのだ。

 

きっと、手下のチンピラたちがこのホテルに入ったことを恭也に伝えているはずだ。

 

すぐに手下たちが乗り込んでこないことを不思議に思った桜井だったが、恭也の本意をすぐに見抜いていた。

 

自分の策略を成功させるために、宇宙との既成事実をつくろうとしているのだ、恭也は。

 

桜井に取って代わるためには、桜井が宇宙と結ばれることが必要だと思ったのだろう。

 

桜井が宇宙を抱いたと知ったら、亨はきっと怒り狂うだろう。

 

自分の手持ちの駒が勝手に動き、宇宙を愛するという裏切りを見せつけたのだ。

 

以前逃げ出そうとしたときのような拷問を受けるくらいでは、済まないかもしれない。

 

だがそれでも、桜井は宇宙を愛することを選んだ。

 

そして宇宙も、すべてを打ち明けた桜井を受け入れてくれた。

 

それでも桜井を愛すると言ってくれた。

 

もう、迷うことはなかった。

 

「もっと時間があれば・・・もっと感じさせてあげられるんですけど・・・」

 

桜井は少し残念そうに言いながらペチャッと分身の頭を舐める。

 

「あんっ」

 

その舌先の感触が、もう頭の中がフニャフニャになってしまうくらい気持ちよかった。

 

分身を愛する桜井に愛撫されているというだけでもどうにかなってしまいそうなのに、先端から滲み出ている先走りまで飲み込んでくれている。

 

ゴクンッと喉が鳴るのだから、それが分かる。

 

もう宇宙は、頭の中がどうにかなってしまいそうだった。

 

こんなことなら、ベッドで裸になる前にシャワーを浴びればよかった。

 

だって、汚いのに、あんなとこ。

 

こんなに舐められるなんて思ってなかったから・・・。

 

「だめぇ・・・桜井さん・・・そんなにしないで・・・だめぇぇ・・・」

 

宇宙は、チューチューと音を立てて先端を吸う桜井の髪を指に絡めながら訴えた。

 

こんな強烈な愛撫を続けられていたらすぐにでもイッてしまう。

 

だが桜井にしてみれば、なるべく早く宇宙の精液を飲み干して、次の段階に進みたかった。

 

すぐにチンピラたちが乗り込んで来ないと分かっていても、やはり恭也の動きが気がかりだったのだ。

 

少ない時間の中で宇宙と濃密な時間を過ごしたい。

 

この先、どうなってしまうか分からないのだから。

 

自分の運命がまた大きく変わってしまうかもしれないのだから。

 

そう考えたとき、桜井の愛撫の動きが止まった。

 

なぜ気づかなかったのだろうか。

 

今、宇宙を抱いてしまったら、宇宙も自分と同じ運命を辿ることになってしまうかもしれないのだ。

 

今、宇宙を抱いてしまったら、きっと亨は許さない。

 

桜井以上に、宇宙を許さないだろう。

 

拷問されたり、海外に売り飛ばされてしまうのは、宇宙のほうかもしれない。

 

どうしてそのことにもっと早く気づかなかったのかっ!

 

宇宙を愛するあまり、盲目になってしまっていた。

 

宇宙を、裏の世界に引きずり込んではいけない。

 

今ならまだ被害を最小限でくい止めることができるかもしれない。

 

桜井は、そう思うと慌てて身を引いた。

 

急に止まってしまった愛撫に、宇宙が不思議そうな顔をする。

 

「・・・やめましょう。やっぱり、宇宙を引きずり込むわけにはいきません」

 

桜井はそう言って、宇宙の分身から指を離した。

 

宇宙は、愛撫がやんでしまったということよりも、桜井の気持ちが急変してしまったことを気にしていた。

 

そして慌てて、離れていく桜井の上半身に縋りつく。

 

「だめっ・・・。桜井さん・・・だめ。言ったでしょう、僕は桜井さんと運命共同体だって。桜井さんの過去を一緒に受け入れるって」

 

「だけど・・・宇宙。それはそう簡単なことじゃないんです。宇宙が思っている以上に苛酷な運命が私達を待っているかもしれないんですよ。宇宙は、もう二度と教師には戻れないかもしれない。両親や友人たちとも会えなくなってしまうかもしれない。だめです。やはりそんな危険な目には遭わせられない。宇宙が愛おしいばかりに、私は一瞬盲目になっていました。このまま宇宙を抱いていたら、大変なことになっていた・・・」

 

桜井は、宇宙をベッドに残し、床に下りて呟くように言った。

 

だが宇宙は決して諦めなかった。

 

桜井の腕や背中に縋りつく。

 

「どうして?どうして急にそんなことを言うの?」

 

宇宙の薄茶色の瞳には涙が溢れていた。

 

その瞳を振り返るようにして見つめ、桜井が言う。

 

「私のために、宇宙の人生を変えてしまうことはできません。宇宙は、教師という職業を愛しているんでしょう?今の人生を楽しんでいるんでしょう?」

 

と、桜井に問われ、宇宙は改めて自分の人生を振り返った。

 

振り返ってもなお、桜井が愛しかった。

 

今の生活を失ってしまうかもしれない恐怖はある。

 

だけど、そんなことはいつ誰にだって起こることなんだと宇宙は思った。

 

突然の事故に遭って死んでしまうことだってあるじゃないか。

 

突然宝くじに当たって、大金持ちになることだってある。

 

人生は何があるか分からないのだ。

 

それに、たとえ桜井のせいで自分の人生が百八十度変わってしまっても、決して桜井を恨んだりしない。

 

決して後悔したりしない。

 

決して今ここで桜井に抱かれたことを悔やんだりしない。

 

それだけは確信が持てた。

 

宇宙は桜井の広い背中に後ろから抱きついて、涙ながらに語った。

 

「今さら、どうして僕を捨てるの?ここまでついて来たのに、どうして今さら放り出すの?そっちのほうがずっと酷でしょ。ずっとひどいよ・・・」

 

宇宙は泣きながら、桜井の心に訴えるように語りかけた。

 

桜井の心が、また揺れる。

 

「桜井さんのためだったら、僕・・・どうなってもいいって本気で思ってる。桜井さんの苦しみを一緒に背負いたいって、本当に思ってる。それだけじゃだめ?ねぇ、僕を抱く理由にはならない?」

 

泣きじゃくりながら宇宙が言う。

 

桜井の心が、大きく揺れた。

 

もうだめだと思った。

 

せっかく、心を鬼にしたのに。

 

心を鬼にして、自分の欲望を抑えようとしたのに。

 

今の宇宙の言葉ですべてが消されてしまったのだ。

 

「・・・本当に・・・いいんですか?」

 

桜井は、振り返って宇宙の顎を掴んだ。

 

顎は涙で濡れていた。

 

「だから、さっきからいいって言っているじゃないっ。僕は桜井さんを愛することに命をかけるって・・・さっきからずっと言ってるじゃない」

 

少し怒ったような口調で宇宙は言った。

 

たまらなくなった桜井は、宇宙をギューッと抱きしめる。

 

どんな犠牲を払ってでも宇宙が欲しい。

 

どんな悲惨な運命が待ち受けていたとしても、宇宙が欲しい。

 

今すぐに。

 

桜井はもう迷わなかった。

 

恭也の策略にのったとしても、それがなんだというのだ。

 

互いに求め合っている二人が一つになるのに、理由なんていらなかった。

 

「宇宙、愛してます。今まで私は他人に対してこんな気持ちを抱いたことはありません。本当に・・・ 愛してます」